中央アジアのお嫁さん物語「乙嫁語り」

乙嫁語り」は、森薫さんが描く、19世紀末の中央アジアが舞台の漫画です。ロシアの侵攻、土地を巡る部族間の対立など、きな臭い部分もありつつ、当時の人達の日常を生き生きと描いています。

物語の中心になるのは、アミル・カルルクの年の差夫婦。二十歳の姉さん女房アミルは、明るく天真爛漫な女性。弓の名人で、大きな獲物を仕留めるのはお手のもの。彼女を娶ったカルルクはまだ十二歳ですが、賢く思慮深く、思いやりのある少年です。結婚式の日に初めて顔を合わせた二人は、少しずつ互いを知り、想いを深めていきます。夫の服に魔除けの刺繍をしたり、二人で歌って踊ったり。当時の生活は興味深く、美味しそうな料理や緻密な刺繍を含め、つい熱心に読み込んでしまいます。魅力の一つは、森先生の美麗で緻密な絵。装飾品や絨毯の模様まで、細部まで書き込んだ絵は美しく、眺めていて飽きません。羊や馬など、動物達も生き生きと描かれています。

「家長の命令は絶命」「結婚相手は親が決める」など、現代人には違和感のある部分もありますが、ナビゲーター役のイギリス人研究者・スミスさん(現代人寄りの感覚)の目を通して描かれることで、上手く読めるようになっています。

アミル・カルルクのエイホン家を中心に、スミスさんが訪れる地域のお嫁さんの物語も、平行して描かれます。カザフスタンアラル海アンカラなど。

薄幸の未亡人タラスさん、お転婆な双子ライラとレイリ、富豪の妻アニスなど。

土地が変われば文化や習慣も違い、それぞれの女性の人生も異なります。スミスさんが恋をしたり、また現在は廃れた、女性同士の結婚「姉妹妻」の描写があったり。個人的に、女性同士で夫婦の契りを結ぶ姉妹妻の風習は驚きでした。まだ連載途中のこの作品、続きを楽しみに待っています。